canon〔英・仏・ラテン〕,
Kanon〔独〕,
canone〔伊〕
もともとは、古代ギリシア語の kanon(規範)に由来する語。
音楽においては、
ある1声部の旋律を他の(場合によっては複数の)声部が、
一定の時間的間隔をおいて忠実に模倣し、共に進行していく曲の形式 を意味します。
カノンの種類
パッヘルベルのカノンのように、
先行声部をそのまま模倣するカノン以外にも、
いろいろなバリエーションのカノンがあります。
◇ 動きの方向
〔平行カノン〕
後続声部は、先行声部をそのままに、一定の音程間隔で模倣する。
また、先行声部と後続声部の音程関係で、
先行する声部の旋律を、同じ音で追っていく(これは同度のカノンといいます)
もの以外にも、後続声部の旋律を2度上げ(下げ)て追っていく2度のカノン、
同様にして、3度のカノン、5度のカノンなどもあります。
作曲者不明 2声・下5度のカノン
B.ゲージウス作曲 2声・同度のカノン
パレストリーナ作曲 3声・同度のカノン
〔鏡のカノン〕
基本となる旋律の、上または下に鏡を置いた形か、
前・後に置いた形かにより、反行カノンと逆行カノンの2つの種類がある。
反行カノン
転回カノンともいわれる。先行上部の上行は後続声部においては下行で、
下行は上行で応答されるカノンである。
逆行カノン
後続声部は先行声部の旋律を、末尾から最初へと逆行する形をとり、
曲の前半と後半が鏡像的に対称をなすことになる。
J.S.バッハ作曲 音楽の捧げ物Ⅳ
◇ 動きの割合
〔拡大カノン・縮小カノン〕
先行声部を模倣するに当たって、後続声部は前者の動きの音価を一定の比率で
拡大または縮小して動く。
作曲者不明 2声・上5度・拡大のカノン
◇ 先行声部(主題)の数
〔2重カノン・群カノン〕
先行声部が1つのものを単純カノン、先行声部も後続声部も2つあるものを
2重カノンといい、3重以上のカノンもありうる。数声部からなる声部群を
同様声部群で模倣するものは、群カノン、グループカノンとも呼ばれる。
R.シューマン作曲 「礼拝堂」(2重カノン)
◇ カノンの終わり
〔無限カノン〕
カノンの終わりがまた冒頭につながる形のもの。輪唱もこの形である。
◇ 混合カノン
主題と関係のない声部(多くはバスパート)を含むもの。
参考
音楽大辞典 第2巻 /平凡社