blog - バイオリニスト早稲田桜子さんの特別講義レビュー

バイオリニスト早稲田桜子さんの特別講義レビュー

カテゴリ : 
イベント
執筆 : 
kuha 2014-12-16 14:29
2014/12/15(月)11:00から厚木キャンパスのMMスタジオにて、
ヴァイオリニストの早稲田桜子先生の特別講義が行われました。
演奏活動のお忙しいところ、厚木まで足を運んでくださり感謝です。
アーティストとしての演奏活動以外に、音大で週1コマほど個人レッスンの指導をなさっているのですが、メディアアート系の大学は初めてということで、とても楽しみにしておられたとのことでした。

まずは、有名なバイオリン曲エルガーの「愛の挨拶」の生演奏から。
誰もが知っている、とても有名な曲ですが、さすがに、プロのバイオリニストの生演奏の響きは違います。

また、学生が作曲した課題作品を試演してもらいました。
自分の作った曲がプロのバイオリニストに演奏してもらった学生はご満悦の表情でした。

つぎに、バイオリンの奏法解説。
バイオリンは4弦で下から、開放でG, D, A, Eの順です。(ギターの3,4,5,6弦と同じ。上下が逆なのが面白い)
低音域は、人間の声の音域と似ていますが、高音域は人間の声の遥か上にいきます。

面白かったのが、開放弦の共鳴の話。
実際に弾いている弦が鳴っているだけでなく、触っていない開放弦が、現在演奏中の弦の音に共鳴して、響きが増幅するということでした。演奏している弦のピッチがずれていると、開放弦の共鳴がなくなるので、響く演奏か否かは、ここにかかっているということです。
実際に、開放弦が、共鳴して響いている弾き方と、ピッチをわずかにずらして、響いていない弾き方の例を実演されましたが、その違いは歴然としていました。聞かせるバイオリンの秘密は、開放弦の共鳴にありということですね。
これは、サンプリング音源主体のデジタル音楽では体感できないことです。
最近、スピーカからでる音楽に飽き飽きしているのですが、これも大きな要因の一つなのだなと思いました。

重音奏法の話も興味深いです。
ちなみに重音とは「重(おも)い音」ではなく、「音を重(かさ)ねる」ことで、要するに、和音みたいなものです。
バイオリンで2重音が鳴らせることは知ってましたが、3重音、4重音も可能とのことでした。
これは、弓を素早く3つ4つの弦にすべらせることで実現できます。
ギターのストロークも正確には、同時に6本の弦を鳴らすことは不可能で、少しの時間差があるのですが、それと同じことです。

重音を聞いて思ったのが、純正律の響きはすごく綺麗で、バイオリンの音色で奏でる純正の和音は、ハッとするような耳に溶け込む響きです。
普段、平均律の音楽を聞き慣れているだけに、とても新鮮でした。
これはアコースティック楽器で、ライブでないと味わえないでしょう。

また、バイオリンにとって、楽譜上のスラーは特別な意味があって、ボウイングの折り返しの仕方に影響するのそうです。スラーって普段、あんまり意識してませんでしたが、意外な発見でした。

弓の素材は、馬の尻尾です。(くじらのひげではありません)
松ヤニを塗って滑りを調整するのですが、張り替えたての弓は、松ヤニが馴染んでいなく、硬い音がするので、コンサート直前に弓を張り替えた場合は、松ヤニが馴染むまで、何度も演奏するそうです。



ボディは表の板が松、側面と裏面は楓だそうです。
そして、フレット部は、黒檀です。安いバイオリンだと黒く塗装しているだけなので、やがて剥げてくるそうです。
中に魂柱(こんちゅう)という棒が1本はいっており、表板と裏板をつなぎ、楽器全体に音が響かせる役割があります。
楽器の鳴りが悪いと、楽器屋さんで、魂柱を調整してもらうそうです。

演奏体験コーナーで、学生に実際に演奏してもらいました。
意外と上手な学生もいてびっくり。

さて、再び、バイオリン曲の生演奏ですが、圧巻は、バッハの「シャコンヌ」。(正式には、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より「シャコンヌ」)

この曲は、約15分の無伴奏のバイオリン独奏曲で、バイオリン音楽の集大成、最高傑作のひとつです。
単旋律楽器であるバイオリンを、無伴奏でハーモニックに演奏するため、重音が非常に多く、メロディーを弾きながら、2重音はもちろんのこと、三重音、四重音も頻繁に出てくる、エネルギッシュで濃い曲です。

早稲田さんいわく、「朝から、シャコンヌ!」。

この曲は晩餐会など、夕べにドラマチックに、アグレッシブに弾くのが本来なのですが、今回は特別企画ということで、朝からシャコンヌです。

「朝シャコ」という言葉、なかなかイケてると思います。
(「朝からシャンパン?!」、「朝シャン!」みたいな)

とは言うものの、この曲を今回の演奏曲として選んだのは、早稲田さんご自身ですから。

早稲田さんは、この曲を演奏し終わると、自分の細胞が全部入れ替わるかのような気がするそうです。
私自身、シャコンヌを生で聞くのは初めてなのですが、
こんな至近距離で迫力ある演奏を聞けて、無伴奏のバイオリンで、重和音がすべて純正律で、内蔵や骨髄までブルブル響いて共鳴した感じがしました。細胞が入れ替わるという比喩がよく分かりました。

最後の曲は、モンティの「チャールダッシュ」
この曲は即興もあり、ノリのいいリズミカルな速弾きの曲です。
教室内を移動しながのダイナミックな演奏に聞き入ってしまいました。


演奏が終わると、ちょうど、授業終了の鐘の音がなりました。
演奏中に鐘が鳴ったら、マズイなと思っていたのですが、何というジャストタイミング!。

授業終了後も、学生に囲まれて、いろいろと無理難題に答えてくださる早稲田さんでした。

例 YouTubeのアニソンの動画を見せて、「この曲のバイオリン弾いてください!」とか。その場の耳コピで、バシッと弾いてみせるところが、さすがプロ中のプロだと思いました。

とても素晴らしい講義と演奏だったので、今度、中野キャンパスにも来ていただきたいです。

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